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「和楽器の魅力を探る」第2回 ~邦楽囃子の響き~ 実施報告

新・文明の旅 日本文化教育プログラム
「和楽器の魅力を探る」第2回 ~邦楽囃子の響き~
実施報告

2020年11月29日午後、文京学院大学本郷キャンパスで、新・文明の旅 日本文化教育プログラム「和楽器の魅力を探る」第2回 ~邦楽囃子の響き~ が行われました。第1回で演奏を披露いただいた尺八奏者の津上弘道氏に、今回はコーディネーターをお務めいただき、同日昼前に「新・文明の旅」プレガイダンスを受けた学部生12名に、理事長・学長はじめ教職員、アメリカ人チューターが加わり、総勢30名が生の演奏を体感しました。

 今回取り上げたのは、歌舞伎の伴奏として発展してきた邦楽囃子です。邦楽囃子方として藤舎呂近氏、望月左太助氏、藤舎雪丸氏、藤舎英心氏、福原寛瑞氏をお招きし、小鼓、大皮(大鼓)、太鼓(締太鼓)、大太鼓、篠笛、能管、あたり鉦とすず を曲目ごとに組み合わせて、入場曲の他、「水」と「まつり」の2つの曲目を演奏していただきました。また、邦楽囃子の歴史や和楽器の材質・構造・演奏法についての説明を曲の合間に伺いました。さらに終盤には、参加者のうち希望者14名が、小鼓の演奏を体験する機会を得ました。体験者は全員が小鼓を一つずつ手にとり、2~3人に分かれて演奏指導を受けた後に、約1分間の曲を7人で音を揃えて披露しました。

1.jpg入場曲: 能管(福原寛瑞氏)、太鼓(藤舎呂近氏、藤舎雪丸氏)、大太鼓(望月左太助氏)。厳かな笛の音と迫力ある太鼓の響きが会場の期待感を一気に高めました。

 ご挨拶の後、邦楽囃子(別名、歌舞伎囃子)の説明がありました。「歌舞伎は、神に捧げる能に比べて、民衆により近く、江戸時代に歌舞伎を上演した芝居小屋は、現代の映画館並みに数千軒存在し、邦楽囃子も元来、文化教養というより民衆の音楽です。学校で自国の楽器に触れないのは日本だけであり、是非この機会に和楽器に親しんで下さい」とご案内がありました。

2.jpg「水」: 篠笛・能管(福原寛瑞氏)、小鼓(藤舎呂近氏)、大皮(藤舎英心氏)、太鼓(藤舎雪丸氏)。一滴の水のしずくは川になり、さらに雨が加わると川も次第に荒れ、大きな波となって流れてゆき、やがて嵐が去った静けさの中、再び水がしずくとなって流れてゆくという水の一生が表現されました。

 邦楽は間が定まっておらず指揮者がいないため、演奏者によって曲が変わると言っても過言ではなく、聞き手も自身の感性で聞くことから、この曲に何を感じるかは人それぞれであり、人の一生を感じたと言う人もいたそうです。

一曲目の演奏後、楽器を紹介していただきました。まず楽器の並び方には、音の出処が口に近いほど(すなわち唄、笛、小鼓、大皮、太鼓の順に)向かって右側(上座)に座るという決まりがあることを教わりました。

 小鼓は砂時計形の木製の胴の両側に馬の革を張った枠付き締太鼓であり、革を適度に湿らせ音に余韻を与え、調べ(ひも)の握りの強弱で革の張りを変え音の高さや響きを打ち分けるそうです。左手で持って右肩に担ぎ、右手で打ちます。小鼓は、現代の最新技術を使って新たに作っても、200~300年前に作られた小鼓の響きの良さを超えることができず、また作られてから50年以上打ち続けてようやく良い音が出るようになるので、演奏者の技だけでなく楽器も伝承する必要がある、ということを、実際に新旧の小鼓の響きの違いを聴き比べながら伺いました。

 大皮、別名大鼓、は、小鼓とは対照的に馬の革を焙って乾燥させ、調べできつく締め上げます。左手で持って腰の左に構え、右手に付けた指皮と呼ばれる硬いサックで打つことで、金属質な甲高い音を出します。音の高さを変えられないので、それを補う掛け声が大事、とのことでした。

 太鼓には枠が付いており、革を麻製の調べで強く締め上げることから、締太鼓とも呼ばれます。革の中心部は鹿革で補強されており、この中心部のみを桴(ばち)で打つように作られています。桴として、能では太桴のみを使い、歌舞伎では太桴に加えて細桴も使います。しかも太桴は肩肘を張って構え、細桴は肩と肘を緩めて構える、といった違いがあるそうです。

 篠笛は、篠竹に息を吹き込む唄口と七つの指穴をあけた構造で、旋律を吹くことができます。歌舞伎で使われますが、能では使われません。

 能管は、唄口と指穴の間に厚さ2ミリ程の竹管が挿入されており旋律を吹けない構造になっています。大太鼓とともに情景を表すために使われます。

 これらの楽器の擬音は現代の日本語の一部となっており、蒲公英(「たん」「ぽ」「ぽ」)は鼓草という別名をもつこと、あたり鉦(「ちゃん」)と小鼓(「ぽん」)を同時に演奏(ちゃんぽん)しないこと、お化けの効果音「ひゅーどろどろ」が邦楽囃子で情景を表す能管と大太鼓の音に由来することなどを伺いました。この最後の例と次に演奏される二曲目に関連して、偽物の音で本物の音をつくるという邦楽の「きれいごと」の心意気についても解説がなされました。

3.jpg「まつり」: 太鼓(藤舎呂近氏、藤舎雪丸氏)、笛(福原寛瑞氏)、大太鼓(望月左太助氏、藤舎英心氏)、あたり鉦・すず(藤舎英心氏)。祭りの朝、遠く近くに聞こえる水の音から始まり、朝日の光が次第に輝きを増してゆく中、道に並んだ神輿をかつぐために町内の若い衆が一人また一人と集まり、いよいよ祭りが始まると太陽の下で激しい鳴物と熱気に包まれて人間の覇気が漲り、夕刻の祭りのクライマックスまで続いてゆく、といった祭りの一日を表した曲でした。

 邦楽囃子の名の通り、威勢の良い太鼓や笛の音が、コロナ禍でふさぎがちな気持ちを大いに盛り上げてくれました。

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 小鼓演奏体験では、楽譜の説明の後に参加学生全員が和楽器に直に触れることができ、日本文化にあらためて興味をもつ良いきっかけを与えてくれました。

 今回は、演奏・解説・体験が組み合わさった企画であり、演奏体験者は勿論のこと、参加者全員が邦楽囃子を楽しむことができました。和楽器を含む日本の文化をみつめ直し、日本を海外に発信してゆく今後の活動につなげたいと思います。

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