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2016年新春のご挨拶:「建学の精神を育む海外留学」<学長 工藤秀機>

大学2016.01.01
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 明けましておめでとうございます。年頭にあたって皆様とご家族のご健康とご多幸を祈念申し上げます。
 
 日本人の海外留学生の推移は2004年の約8万3000人をピークに減少に向かい2011年に底をつき約5万7000人となりましたが、その後の上昇傾向はあまり顕著ではありません。そのため政府は2013年に第2期教育振興基本計画を掲げ、日本人の海外留学者数の大幅な増加を目指すことを決めています。大学生の留学交流・国際交流を推進するため、2020年までに現在の約6万人から12万人に留学生を倍増させることを目標にしています。
 このように日本の政府が力を入れているグローバル化促進の背景には、少子化の急激な進行による生産年齢人口の大幅な減少のほか、日本の一人当たりGDPが2000年の世界第3位であったころから急落しはじめ、最近では15位を下回るまでに後退したことがあげられています。このような危機的状況に対応する成長戦略のなかで、特に大学の果たす役割が強調されています。日本人の海外留学者数が全体としては伸び悩んでいる一方で、実は大学間協定に基づく日本人学生の留学は増加しているという調査結果があります。したがってグローバル化を促進させるための方策として大学がなすべきことは、海外の大学との大学間協定をさらに積極的に進めてゆくことにあるのではないかと思われます。
 ところで、このように日本の大学全体がグローバル化を進めている今、本学のグローバル化を支える留学制度というものを、今後どのように位置付けていけばよいかを一度考えてみる必要があると思います。
私立大学の特色のひとつは、建学の精神あるいは独自の教育理念にしたがって教育を展開してゆくことであり、グローバル教育の位置付けもその理念に従って行われるのが自然です。本学は、建学の精神である「自立と共生」を教育の根幹に据えた高等教育を進めているわけですが、グローバル社会において、学生にこの理念を理解してもらう最も有効な方法のひとつが「海外留学」にあると思われます。
本学にはさまざまな留学制度が設けられています。春や夏の学業休暇中に短期間で行う語学研修プログラムや、本格的に科目を履修する長期留学・交換留学のほか、フィールドスタディズや、海外企業などでのインターンシップ、海外での調査・研究を目的にしたゼミ活動を行うなどのプログラムなどもあります。ほかにも、本学独自の全学部横断型グローバル人材育成プログラムである「文京GCI」があります。「文京GCI」はアジア地域を重視しているのが特徴です。特にビジネスの発展が目覚ましい東南アジア地域での海外留学・研修を1年次から実施し、多様な英語(グローバル英語)の修得を目指しています。
 このような留学制度を利用して、学生時代に一定期間海外に滞在して新たな経験を積むことは、語学の学習成果を上げるうえで役立つだけでなく、自己の立ち位置を自覚し、異文化におけるコミュニケーションの重要さに気づくことにもなります。異文化に触れることで、自国の文化や歴史への理解を深めることの大切さを改めて認識し、ものごとを観察する視点が変わるのです。そして、国際社会が必要とする人材として成長してゆくことにつながっていきます。留学、すなわち異文化圏での体験は、学生一人一人の「自立」を促すとともに、多民族との「共生」の重要性を認識する機会となるのです。
 文京学院大学におけるグローバル教育の目的は政府が要請するグローバル人材育の育成だけではなく、むしろ「建学の精神の涵養」にあるともいえます。そのためにもできるだけ多くの学生が海外で異文化にふれる経験を持てるような環境を整えていくことを、本年の大きな目標の一つとして掲げたいと思っております。
 
 この新しい年がより佳き年になりますよう、改めて心より祈念いたしまして、私からの年頭の挨拶とさせていただきます。